高松高等裁判所 昭和40年(う)218号 判決 1966年1月19日
被告人 山崎久万守
主文
本件控訴を棄却する。
理由
本件控訴の趣意は記録に編綴してある弁護人梅田鶴吉作成名義の控訴趣意書に記載してあるとおりであるから、これを引用する。
控訴趣意第一点について
しかし、刑法二〇八条ノ二の一項の兇器準備集合罪は、他人の生命、身体又は財産に対する共同加害の目的を要件とし、単に改正前の暴力行為等処罰ニ関スル法律一条一項の罪にかぎらず、殺人、傷害又は財産一般を侵害する罪の予備罪たる性質を有するものであつて、右暴力行為等処罰ニ関スル法律違反罪に吸収されないと解すべきである。
なお、右兇器準備集合罪は、公共危険のほか、主として個人の生命、身体又は財産を保護法益とし、前示の目的を要件とするものであるから、右暴力行為等処罰ニ関スル法律違反罪と手段と結果の関係に在り、両者は牽連犯であると解するのが相当である。
それ故、原判決には所論の法令の解釈適用の誤りはなく、論旨は理由がない。
同第二点について
しかし、原判決が本件兇器準備集合罪について掲げた各証拠を総合すると、被告人が匕首を携帯して森本進らと集合した場所は所論の鴨島町駅前であるけれども、中村堅介が他の集合者らが兇器を準備していることを知つたのは所論の西松建設株式会社宮川内出張所附近であつたことが認められるから、同所を被告人や森本進ら八名の兇器準備集合の場所と認定した原判決には所論の誤認はない。論旨は理由がない。
同第三点について
被告人は、原判示の二回に亘る累犯前科を有し、本件犯行当時暴力的団体たる森本組の組員であり、本件共同脅迫行為に積極的に加功したばかりでなく、別に本件の傷害罪をも犯していること、本件兇器準備集合及び共同脅迫は被告人の発意に基づくこと、その他記録に現われた諸般の情状を考量すれば、原判決の量刑が重すぎるとは認められないから、論旨は採用できない。
そこで、刑訴法第三九六条に従い、主文のとおり判決する。
(裁判官 横江文幹 東民夫 梨岡輝彦)